バイアグラ誕生から27年セクシャルウェルネス(性の健康)が「恥」から「医療」に変わった瞬間
なかなかニュースレターを更新できないまま4月に突入したため「こりゃいかん」と久しぶりの更新です。私自身の出産も近づいてきたので、自宅でインプットとアウトプットすることに力を入れていきます。
さて、今回はアメリカでのニュース記事に触発されバイアグラの話題です。
米国USAトゥデイ紙が報じたバイアグラ承認27周年の記事は、一つの医薬品がいかに社会の性に関するコミュニケーションに影響を与えたかを振り返っています。
1998年に米国FDAが承認した小さな青い錠剤は、「勃起不全」という言葉と概念を一般化し、セクシャルウェルネス(性の健康)を医学的課題として再定義しました。
日本と欧米では性に関する話題への接し方に大きな違いがあります。欧米では元上院議員が公の場でED治療について語る一方、日本ではセクシャルウェルネス(性の健康)について公の場で議論されることは依然として少なく(NHKが度々取り上げて「すごい!」となる瞬間があるくらい)、医療機関への受診率も低いと聞きます。このコントラストを念頭に置きつつ、バイアグラが世界中のセクシャルウェルネス(性の健康)観に与えた影響と、日本社会への示唆を探ります。
「語られなかった悩み」から医療へ
1998年3月、FDAがバイアグラを承認するまで、勃起不全(ED)はほとんど公の場で語られることはありませんでした。アメリカでもEDについては加齢によるジョークとして扱われることが多かったようです。
バイアグラは当初、心臓病の治療薬として開発されていました。ファイザー社の研究者たちが臨床試験中に偶然、この薬による勃起を促進する効果を発見したのです。この「思いがけない副作用」が、後に巨大な医薬品市場を生み出すことになりました。
発売初年度だけでアメリカ国内で約1億錠、8億ドル近い売上を記録しています。1億錠というと、当時のアメリカ人の人口を見て、単純計算で3人に1人が手に取ったレベルの多さです。
ジョークとして、そして個人の欠陥として捉えられていたものが、治療可能な医学的に捉えられるものとして変わった瞬間でした。
特に効果的だったのは、元上院議員ボブ・ドール氏を起用した広告キャンペーンです。公人がEDについて公然と語ることが「自分もEDについて話していいんだ」と思わせる大きなきっかけになったよう。
「インポテンツ」から「ED」へ
バイアグラの登場は薬だけでなく、言葉をも変えました。
それまで使われていた「インポテンス(impotence)」という言葉には「無力」「無能」といった否定的な意味が含まれていました。日本でも「インポ」と略して使われているのを時折目にしますが、多くの男性に恥辱感を与えるような表現である印象を受けます。
元の記事でアリシア・ウォーカー准教授は「『勃起不全(erectile dysfunction)』という言葉は臨床的で、治療可能で、生物学に根ざしているように聞こえた。この言葉の変化は会話全体のトーンを変えた」と述べています。
「インポテンツ」から「ED」への表現変化は、単なる言葉の置き換えではなく、問題自体の捉え方を変えたようです。「ED」は「あなたに問題がある」ではなく「あなたの体に起きている医学的状態」を意味するようになりました。
医学用語がスティグマを減らす
医学用語を使うことで、性機能の問題は「個人の弱さ」から「治療可能な症状」へと変わりました。これは病気に対する偏見を減らす重要な一歩です。
例えば「うつ病」が「気の弱さ」ではなく「脳の状態」として理解されるようになったことで、多くの人が治療を受けやすくなったのも同じだと感じています。
EDも「男らしさの喪失」ではなく「血流の問題」として捉えられるようになり、医師に相談するハードルも下がったのかもしれません。
日本語での表現の変化と課題
日本でも「インポテンツ」から「ED(勃起不全)」という言葉への移行が進みました。一方で、日本語では性に関する医学的な表現そのものが一般に浸透しておらず、正確な言葉を知らないために悩みを表現できない人もまだ多いのかもしれません。性教育でも聞かなかったしな…私も「インポ」のような言葉によるからかいを見たり聞いたりして初めて存在を知ったかも。
テレビCMでも「ED」という略語は使われますが、その意味を詳しく説明することは少なく、「男性の悩み」という曖昧な表現にとどまっていました。サッカーの神様のペレが出ているED治療薬のCMを見たけども、確かに分かりづらい表現だと感じた。
ファイザーさん、いろんな表現をされている…
診察室でのコミュニケーションギャップはあるか
日本の医療現場では、患者も医師も性の問題について話すことに抵抗を感じていると耳にします。実際にカウンセリングの場でも「病院では話せなかった」と口にされる方は多いです。
医師との会話でも、はっきりと症状を伝えられない患者と、踏み込んだ質問をしにくい医師の間でコミュニケーションギャップが生じていると想像して、「何となく元気がない」といった曖昧な表現から本当の問題を読み取る必要があるケースもあるのかなと思い、知り合いの泌尿器科医の先生に聞いてみました。
・診察の場では、そのために来ているので、躊躇われることはほとんどない
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